「期間損益よりCF大事にする」:

CF指標の選択肢として、営業CF、FCF、EBITDA

  1. 営業CFは1兆円超と潤沢。第6回クラスで紹介したアクルーアル(純利益-営業CF)が約2,000億円のマイナスを示すなど、強いCF創出力を示している
  2. FCFは2兆円超のマイナスとなっている。ただし、当該年度に大型M&A(英アーム社)の子会社株式取得のための支出3兆円超があった影響が大きく、これを除けば、株式売却収入などによって投資CFはほぼゼロであり、営業CF=FCFに近い状況となっている。P&Gが重視しているFCFプロダクティビティ(FCF/純利益)でも、100%を超える値となる
  3. 営業利益に減価償却費を足し戻すと、1兆3,000億円(半年)を超える潤沢な水準である。EBITDAマージンは30%超と、CFベースの高い収益力を実現している

 

「格付けが下がっても、大型の案件に投資するときはレバレッジが高くなる」: 

有利子負債の妥当性を評価するために、nDebt/EBITDA、nDEレシオ

  1. 6兆円に対して、EBITDA1兆3,000億円から、nDebt/EBITDA倍率は約4.5倍(半年分のEBITDAを単純に2倍して計算)。多少高めではあるが、収益力で正当化できる健全な数値の範囲と判断できる
  2. 自己資本2兆2,000億円でnDebtを割ると、nDEレシオは5倍超。有利子負債額は、EBITDAの収益力にはほぼ見合っているが、自己資本とのバランスはあまりよくなく映る。今年度は自社株買い3,500億円を実施したことも一因であり、レバレッジをかけながら株主還元も積極化している姿が垣間見える

 

「少なくとも向こう2年以上の社債やローンの償還に耐えられるだけのキャッシュ」:

流動負債(1年以内に満期到来)にある有利子負債5兆円は、現金及び現金同等物2.6兆円を超えているため、十分なキャッシュを保有していないように映る。実際には流動負債に計上されている有利子負債でも自動的にロールオーバーできるものや、銀行からのコミットメント契約の下で実質長期化されているものも存在すると想定される。財務部長の発言が正しいのであれば、2.6兆円の半分に相当する1.3兆円未満の有利子負債の満期が実質的に毎年到来することになる。