仕事に向き合う姿勢について② 企業内研修編「年間30社の企業内研修を担当して」


シリーズ『仕事に向き合う姿勢について』

①書籍執筆編「出版書籍累計12万冊を超えて」こちらから


 

私にとっても受講される方にとっても、せっかくの与えられた貴重な機会です。ビジネスの現場で活用できる活きた会計・ファイナンスを確実に理解し、将来の仕事やキャリア形成におけるパワフルな武器となるように、私自身も最大限の準備をして当日を迎えるようにしています。

 

企業内研修において、大切にしている5つのこと

そこで今日は、私が長年にわたって、企業内研修を行う際に大切にしている5つのことを記述してみることとします。

 

1.講師は、経営者の代弁者である

なぜ企業が費用を負担してまで、従業員の教育研修を行うのでしょう。研修のための研修では決してありません。それは、企業理念を実現するためであり、企業の持続的成長を図るために必要不可欠だから行うものであるはずです。本来であれば経営者自らが講師を務めたいところでしょうが、様々な制約から私たちに業務委託されているのだととらえています。つまり私たち講師は、教育という形を通した経営者の代弁者であるべきです。

ある企業に訪問する際には、その企業の経営理念や中長期の経営計画に始まり、関連する新聞・雑誌記事を通して、企業、業界、競合、顧客動向など、かなり広範に調べます。私がその企業の経営者であれば、会計・ファイナンスを通して何を伝えたいのか、そして従業員一人一人に会計・ファイナンスを通して何を考えてもらいたいのか。

研修を企画される人事部等ご担当者の方も必ずしも得意でないことの多い分野だからこそ、講師が経営者の代弁者を自覚し、経営者と従業員一人一人を橋渡しすることは、重要な心構えだと考えています。

 

2.4者のコラボレーションが研修成功のキーである

そのためには、研修の企画から実施に至るまで、講師、研修企画会社、クライアント企業事務局、受講者の4者のコラボレーションは重要なキーとなっていきます。特に企画初年度については、研修実施に至るまで可能な限り4者間のコミュニケーションを図ることによって、研修成功の確度は格段に上がっていきます。先日も、受講者全員から「大変満足」と評価をいただいたある企業の研修では、

  • 研修企画会社の講師やクライアント企業に対する密なインプットとコミュニケーション
  • 目的意識を明確に持ち、これを講師である私に直接伝達する意義を真に理解されているクライアント企業事務局
  • 研修参加へのモチベーションが高く、事前課題、研修当日ともに、一貫して能動的に取り組む研修受講者

のコラボレーションが見事に形成されていました。

「講師は経営者の代弁者」である以上、4者間のコラボレーションにより、講師が研修の目的を100%理解し、納得していることは、研修の目的達成に向けてもっとも重要なファクターとなるでしょう。

 

3.最新の企業ケースを使用する

クライアント企業にて研修を行う際には、同企業の最新決算書の分析、意識している競合との多面的な比較や、クライアント企業の分析など、ご要望に応じてできる限り取り扱うようにしています。必ずしも経理部や財務部ではない受講者を対象にした場合、もっとも関心が強く、かつ飲み込みが早いのは、やはり自社の決算書です。

目まぐるしく変化する昨今であるからこそ、最新の決算数値を用いた分析を行うと同時に、過去5~10年程度を一覧で振り返ることによって、マクロ環境の変化と自社の意思決定が決算数値にどのような影響を与えてきたのか、そして将来の環境変化が自社の決算書にどのような影響を与えうるのかを理解してもらう機会へと発展させています。

 

4.インタラクティブ性を重視する

よほど面白い内容でないと、オーディエンスはだんだんと眠気が増してくるものです。一般的に会計やファイナンスが面白くて仕方ない、という方は、世の中では残念ながらマイノリティです。そのためには、常に「自発的に考えさせる」ということを意識して進めていきます。

受講者に考えさせるための3つのキーワードは、

  • Why?(なぜ、そのような数値なのか?)
  • So What? (Why?で導いた理由から、どんな経営への意味合いを導き出すのか?)
  • How? (So What?で導いた意味合いから、どんなアクションへと結びつけるのか?)

であることは、私の書籍の中でも常に伝えていることですが、これを実践していくのが研修の場です。

3つのキーワードに的確に答えるには、分析対象企業の経営やマクロ環境について、一定の知識が無くてはいけません。分からなければ自分で調べたり、ヒアリングしたりすることが実務では求められていくことでしょう。

会計数値の情報を基にして、こうしたビジネスの分析や考察に発展できる方ほど、会計をビジネス言語として上手に使いこなしている方と評価しています。そのレベルを目指すのが、書籍やビデオだけでは学びきれないライブ研修の醍醐味でしょう。

 

5.研修企画⇒書籍⇒事前課題⇒研修当日⇒研修後フォローアップの、バリューチェンを一貫させる

研修当日の朝9時に集合してテキストを渡され、「あぁ、こんな内容の会計を学習するのか」と初めて知り、午前3時間のレクチャーを受けて1時間の昼食休憩、17時終了なので、休憩を加味すると正味6時間ほどの学習。これは実にもったいない話だと思います。

研修は研修当日の朝9時に始まるものではなく、少なくとも研修の1か月前からスタートすべきものです。担当講師が執筆した書籍を読む(事前講義はオリジナルに収録したビデオで実施する企業もあります)、担当講師が研修の目的に合致して作成したオリジナルの事前課題をこなして、ようやく研修当日を迎えます。お仕事をされながらの研修準備は容易ではないですが、会社が貴重なお金と時間を使って設定している学習機会です。そこからのアウトプットを最大化するには、参加者も相応の努力を払うのは当然でしょう。

また研修当日の17時に終了するのではなく、その後確認テストやフォローアップ研修の実施、レポート課題への取り組みなど、やりっぱなしにしない仕組みを導入される企業も増えてきています。

研修企画⇒書籍⇒事前課題⇒研修当日⇒研修後フォローアップのいわば研修のバリューチェンにおいて、一貫して同じコンテンツ(=講師)で行うことは重要な要素です。共通した言語、共通した思考アプローチなど、いわば共通した「型」によって、受講者には本質に集中した学習環境を提供できると考えるためです。

 

以上、簡単ではありますが、私が12年間にわたって企業内研修の講師を務めるうえで、常に大切にしてきたこと、そしてこれからも変わらず大切にしていくことを記述しました。

 

会計・ファイナンス分野の社内教育、従業員の育成やスキルアップにおきまして、ご相談事項等ございましたら、どうぞお気軽にご相談いただければ幸いです。

 

企業内研修に関するお問い合わせは、こちらよりお願いいたします。


著者

大津 広一

株式会社オオツ・インターナショナル代表
米国公認会計士、経営コンサルタント

早稲田大学大学院ビジネススクール客員教授
多摩大学大学院ビジネススクール客員教授
慶應義塾大学理工学部管理工学科非常勤講師