ROEを目標とする企業たちを知りたければ、「ROE」と「中期計画」を キーワードとして、Googleなどで検索するとたくさん出てきます。

 様々な企業名が検索にひっかかりますが、ひとつの特徴は特定の業種に偏ってはいないということでしょう。

 前回のメルマガに書いたように、ROEは、「株主にとっての利回り」 です。つまり株主のための指標なのだから、上場企業であれば意識するのは当然です。そんな中から、実際にROEを目標とする企業のひとつとして、松下 電機産業のROEに注目してみましょう。

 

 国内電機業界の勝ち組といわれる松下のROEは、過去5年間で △0.6 ⇒ 1.3 ⇒ 1.7 ⇒ 4.2 ⇒ 5.6%(2007年3月期)と推移しています。見事な右肩上がりです。ただし、国内平均の9%前後と比べると、見劣りします。

 松下は今年年頭に発表した中期計画「GP3計画」の中で、「2009年度 ROE10%」を目標数値として打ち出しました。これまでの松下の中期計画では売上高営業利益率、FCF、EVAを 中心的な目標数値としていたので、どちらかと言うと構造改革による収益性の向上がメッセージでした。

 しかし、今中期計画から売上成長とROEを加えたことで、「成長」と 「株主への貢献」を前面に打ち出した内容にシフトしています。松下の中期計画の資料を見ると、これまでの構造改革によって、「グローバル生き残りレベルに到達」とあります。

 また2009年度の経営目標である「売上10兆円、ROE10%」が達成 できても、それは「グローバルエクセレンスへの挑戦権の獲得となっています。松下が最終的に目指す「グローバルエクセレンス」はまだその先にあるということです。国内では勝ち組ともてはやされる松下ですが、グローバル市場ではエクセレンスには程遠いという経営陣の危機感 の表明ととれます。

 松下はROE10%をどうやって達成しようとしているのでしょうか?これ については、「5. ROEは分解することで、その意味が見えてくる」で触れてみましょう。

 ROE10%は国内平均値を十分に上回っているし、これで十分ということでしょうか?これについては、「9. ROE目標10%の落とし穴」で触れてみましょう。

 

  1. ROEって何?(2007.7.19)
  2. ROEを目標とする企業たち(2007.7.24)
  3. ROEを要求する投資家たち(2007.8.1)
  4. 会社法施行によって、面倒になったROEの計算(2007.8.6)
  5. ROEは分解することで、その意味が見えてくる(2007.8.13)
  6. ROEを目標にしてはいけない企業たち(2007.8.20)
  7. ROE向上の有効手段は自社株買い

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