『ビジネススクールで身につける会計力と戦略思考力 ビジネスモデル編』を10月2日に出版します!


会計力と戦略思考力 ビジネスモデル編

会計というと、皆さんは何をイメージしますか?

私は会計分野のマネジメント教育講師として毎年数千名の方とお会いします。そんな中で気づくのは、「自分は会計が得意です」などと言う方はほとんどいなくて、「私、会計は苦手なんです」と言う方が大部分だということです。

なぜでしょう? 

それはきっと、「会計=細かなルールや用語の多い専門家の領域」という固定観念が強いからなのでしょう。

たしかに一般の社会人にとって、細かな会計のルールや用語を丸覚えしても、おそらく仕事の役に立たないのも事実です。ですが、そんな本質でないところにつまずいてしまって、「会計=自分とは無縁の世界」という食わず嫌いで終わってしまうのは、実にもったいない話です。

なぜなら、会計=とっても多くの有益な情報があふれた宝の山だからです。

 

会計数値の側面から、ビジネスモデルを観察する

一方で、ビジネスモデルという言葉は語られて久しいですが、多くの場合、利益を生み出すうまい仕組みは語っても、実際にそのビジネスモデルを実行することによって、どのような収益や費用、資産や資金調達の構造を持つ必要があるかの説明にまで至っていません。

どんなに美しいビジネスモデルのストーリーであっても、それを実現するには多くの費用や資産への投資、あるいはそれに伴う相応の資金調達をしなくてはならないのです。そうでなければ、ビジネスモデルは夢物語で終わってしまうか、後になって「こんなはずではなかった」と後悔するばかりです。

 たとえば、「H&MやZARAのような欧米アパレルのファストファッションのビジネスモデルは、在庫売り切り商売なので保有在庫は少ない」といった説明がよくされています。一見正しい理屈に見えますが、実際のH&Mの決算書を見てください。他の小売業に比べてもファストファッションだからこそ、実際には巨額の在庫投資をしなくてはならないことが分かります。

 こうしたことは、そのビジネスモデルを持つ企業の決算書を見ればすぐに解明できることです。後になって「在庫投資や在庫リスクをこんなに抱えるとは思わなかった」などと後悔しないように、事前にできる客観的な数値に基づく入念な調査は、多数のベンチマーク企業を通しておこなっておくべきでしょう。

 

 

20の企業と30の業界を俯瞰しよう

本書は、優れたビジネスモデルを保有する実在する企業の実際の決算書が、どういった決算書の構造によって形成されているかを学ぶことに主眼を置いています。

企業のビジネスモデルと決算数値の関係性を考察するアプローチが習得できれば、それはあらゆるビジネスモデルの分析にも応用できるものです。本書では9のステージで、合計20の企業や30の業界を見ていきます。

 ユニクロ、しまむらなどの国内小売業に始まって、H&M、ウォルマートなどの海外小売業、さらには製造業、サービス業と、身近なところから徐々に領域を拡張していく形でケースを紹介していきます。

20の企業と30の業界といっても、本書だけでそのすべてを網羅することは難しいため、特徴的なところを中心に触れていきます。さらに詳しい情報を知りたい企業があれば、ぜひその企業のホームページから決算書を検索して、隅々まで読んでみてください。数多くの新たな発見に出会えることを約束します。

 

 

前著との関係性について

本書は、2007年8月に初版を出版し、その後増刷を重ね、2013年10月に改訂新版を出版した『ポケットMBA④ ビジネススクールで身につける会計力と戦略思考力〈新版〉』の姉妹本です。

前著で損益計算書、貸借対照表の基本的な構造を理解し、戦略の違いが決算書の各数値にどのような違いとなって表れるかに関心を深めた読者には、さらなる多くの実際の企業のケーススタディを通して、「会計力と戦略思考力」への洞察を深めていただければと思います。

 一方で、本書は前著の姉妹本ではありますが、前著の終わりからそのまま継続している内容ではありません。前著を読まれていない方でも、本「ビジネスモデル編」から読み、さまざまなビジネスモデルの違いが決算書の数値に具体的にどのように表れているかをクイズ形式で読み進めてみてください。その後で前著をお読みいただき、損益計算書と貸借対照表の全体像をあらためて確認するのもよいでしょう。

 

私の『ビジネススクールで身につける~』シリーズも、「ファイナンスと事業数値化力」に続き、本「会計力と戦略思考力<新版>」を合わせて、お陰様で累計7万部超に達しました。

 少しでも多くの読者の方々が、決算書の仕組みや数値、ファイナンス理論と応用について、実務に直結して使いこなすことのできる一助となりますよう、心より祈念しております。

 

会計力と戦略思考力 ビジネスモデル編
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<本書の目次>

 

三越伊勢丹vsユニクロvsしまむら

STAGE 1

◆ 規模(売上高)から企業をイメージする 

◆ 利益率から企業をイメージする

◆ 三越伊勢丹とユニクロの違いは何だろう?

◆ 小売業で進むSPA化

◆ 一番〝儲かっている〟のはどの会社?

◆ 高い利益率は、SPA企業が吸える甘い蜜

◉ STAGE 1 チェック項目

 

ABCマートvsニトリvsJINS

STAGE 2

◆ SPAの高い総利益率は、他の商品にも応用できる 

◆ ユニクロより高い利益率を生み出す企業たち

◆ SPAモデルの販管費はなぜ高い?

◆ SPAモデルの在庫はなぜ多い? 

◆ SPA企業の決算書が似ている理由 

◉ STAGE 2 チェック項目 

 

ウォルマートvsH&M

STAGE 3

◆ 海外の小売業にも、同じ考え方を当てはめてみよう 

◆ EDLPの戦略のカギは販管費 

◆ 投資効率の優劣をROAから類推する 

◆ ROAの高い企業、ROAの低い企業 

◆ SPAとEDLP、戦略が決める決算書の姿 

◉ STAGE 3 チェック項目 

 

イオンリテールvsイオンモール

STAGE 4

◆ 小売業当てクイズの卒業試験! 

◆ グループへの貢献度が高いのは、リテールか、モールか? 

◆ 低いROAの理由を知る 

◆ キーとなる問いかけは「誰が在庫リスクを負っているのか?」 

◆ スタートトゥデイは小売業か賃貸業か? 

◉ STAGE 4 チェック項目 

 

18のメーカーをROAで斬る

STAGE 5

◆ 一番儲かっているメーカー、一番儲かっていないメーカー 

◆ 利益率と回転率に見る、負の関係 

◆ パラダイス領域に位置するSPA 

◆ なくなりつつあるメーカーと小売業の境界線 

◉ STAGE 5 チェック項目 

 

バリューチェーンのどこを担うかが決算書の構造を決める

STAGE 6

◆ ウォルマートを下回る、低い総利益率と低い販管費率 

◆ バリューチェーンのどこを担うのか 

◆ EMS企業ホンハイのPLは、商社を下回る薄利多売 

◆ セブンイレブン向け売上が7割を占める企業のPLは、ホンハイと類似 

◆ 受託製造企業に見る、BSの共通点 

◆ 受託製造企業とSPA企業のグッドサイクル 

◆ 受託製造企業が中長期的に目指すべきこと 

◉ STAGE 6 チェック項目 

 

SPA企業への対抗策を示したメーカーのROAを時系列で読む

STAGE 7

◆ 経常利益率の改善で、ROAを大幅拡大したM社 

◆ SPA企業に対抗する道筋を示したメーカー、M社 

◆ 全部買って、全部製品にして、全部売ったカルビー 

◆ 顧客視点に立って、「売値-利益=コスト」で考える 

◆ 自社、顧客、株主のための、「利益に向き合った経営」 

◆ バリューチェーンのどこを担うかが決算書の構造を決定する 

◉ STAGE 7 チェック項目 

 

最後のケーススタディは国内最大の複合企業 JR東日本!

STAGE 8

◆ JR東日本をイメージしよう! 

◆ JR東日本に見る、4つの事業セグメント 

◆ セグメント別に計算する、構成比とROA 

◆ 運輸業から拡散する、JR東日本の多角化事業 

◆ JR本州3社の比較から読む、各社の強さや経営課題 

◆11の非メーカーをROAで斬る 

◉ STAGE 8 チェック項目 

 

ROAマップから始める自社の決算書分析

STAGE 9

◆ あなたの会社の決算書を読もう 

◆ 分析のキーとなる3つのキーワード 

◆ ステップ1 ROAマップを描いて、収益構造を俯瞰しよう 

◆ ステップ2 売上高経常利益率のドリルダウンで、利益構造を理解する 

◆ 原価の中身を分析する 

◆ 販管費の中身を分析する 

◆ 営業外収益・費用の中身を分析する 

◆ ステップ3 総資産回転率のドリルダウンで、資産構造を理解する 

◆ キャッシュの中身を分析する 

◆ 売上債権の中身を分析する

◆ 棚卸資産の中身を分析する 

◆ 有形固定資産の中身を分析する 

◆ その他の資産の中身を分析する 

◆ ROAマップの負の曲線、そしてパラダイス領域を目指して 

◉ STAGE 9 チェック項目 

 

もう一段高い分析のための4つのインプット

ADVANCED

1 ROAよりも優れた究極の経営指標、それはROIC 

◆ ROAは万能ではない

◆ 運転資金に注目すると、三菱食品の別の顔が見えてくる 

◆ 資産ではなく投下資本で効率を考えるROIC 

 

2 資産保有の平均値との比較から、ビジネスモデルに基づく資産の分析は始まる 

 

3 ROAと財務レバレッジにも存在する、負の関係性 

◆ ROAとDEレシオには、なぜ負の関係性があるか 

◆ 例外業界であるガス、自動車、電気機器を考える

 

4 傑出したビジネスモデルは、傑出した会計数値となって表れる 

◆ 3つのキーワードを駆使して論理的に思考しているか 

◆ SPA企業の在庫は多くてよい 

◆ 低価格戦略企業の総利益率は低くてよい 

◆ コマツの売掛金回収は遅くてよい 

◆ ソフトバンクの有利子負債は多くてよい

 

 


著者

大津 広一

株式会社オオツ・インターナショナル代表
米国公認会計士、経営コンサルタント

早稲田大学大学院ビジネススクール客員教授
多摩大学大学院ビジネススクール客員教授
慶應義塾大学理工学部管理工学科非常勤講師