2012年4月に出版した『英語の決算書を読むスキル』を13年半ぶりに新版として出版します! おかげさまでその間、絶版となることなく継続的に増刷を重ねてきました。旧著をご購読くださった読者の皆様、心よりありがとうございます。
新版とは言っても13年半ぶりの改定のため、扱っているケース企業はもとより、各章の内容もほぼすべて書き下ろしとなっています。
できるだけ異なった決算書を見ることができるように、会計基準はIFRS(ZARA、TSMC、LVMH)と米国会計基準(Nvidia、Intel、Netflix、Tesla、Walt Disney、Amazon.com)、業種は小売業(ZARA、Amazon.com)、製造業(TSMC、Intel、Tesla、LVMH)、そして非製造業(Nvidia〈ファブレス〉、Netflix、Walt Disney)と、趣の異なるケース企業を選択しました。
それぞれの企業を選択したのにも理由があります。仮に読者の皆さんが仕事で海外企業の決算書を分析するならば、そこには何らかの利害が生じている、あるいは事業モデルを参考にしたいなどといった動機があるはずです。そこで、昨今の国内企業に起きたさまざまな事象を解明するための手段として、海外企業の決算書を見ていくことにしたのです。具体的には、次のとおりです。
(1)ファーストリテイリングの柳井正社長が、売上高10兆円の世界ナンバーワンへの成長戦略を掲げるのはなぜか? アパレル小売世界最大手、ZARAの決算書から考察を深める。
(2)日本政府が主導して、JASMやRapidusを設立し、そこに多額の補助金を投下するのはなぜか? 半導体設計開発のNvidia、ファウンドリーのTSMC、垂直統合型Intelの3社の決算書から考察を深める。
(3)日本でも有料動画配信サービス企業の立ち上げは起きているが、遥か先を行く世界トップ企業はどのようなコンテンツ投資や収益構造をしているのか? 有料動画配信サービス世界最大手、Netflixの決算書から考察を深める。
(4)日本の主力産業である自動車業界において、EV自動車を初めとする100年に一度の大変革は今後どのよう進んでいくのか? EV市場を牽引し、世界時価総額自動車トップ企業、Teslaの決算書から考察を深める。
(5)モノからコトへと言われる昨今、モノとコトの代表格企業の事業ポートフォリオ経営から日本企業に得られる示唆は何か? モノを代表してLVMH、コトを代表してWalt Disneyの決算書から考察を深める
(6)EC企業からクラウド、そしてAI革命へと変化を遂げ続ける米国企業からどんな教訓を得られるか? 9つのステップ活用して、Amazon.comの決算書から考察を深める。
旧版からのCOLUMN(数値や会計に関するさまざまな英語表現の紹介)に加えて、さらなるパワーアップとして、新版では章末に下記の3つの新たな取り組みを実施しています。
(1)各社のKAMから決算書の留意点を知る
日本でも2021年3月31日以後に終了する連結会計年度から義務化された「監査上の主要な検討事項(KAM:Key Audit Matters)」を各章末に挿入しています。Netflixのコンテンツ資産の耐用年数の設定や、TSMCの減価償却の開始のタイミングなど、海外には興味深いKAMの指摘が多数見られます(米国会計基準では、Critical Audit Matterと呼ばれます)。
(2)ケースに関連するその他の企業、全47社をまとめて紹介
各章で扱ったケース企業に関連する、その他の企業全47社の財務3表の概要を各章末で紹介しています。ZARAと比べてH&MやGAPはどうなっているのか? NVIDIAやTSMCに対するSamsungやHuaweiは? NetflixとSpotifyの違いは? Teslaと比較したBYDやFerrariの姿は? そしてDisneyと比較したUniversal Studio(Comcast傘下)、LVMHに対するHermesやKering(Gucciなど)はどうでしょう?
(3)「この数値に着目したい! 気になるあの海外企業の決算書」30社を一気に概観
巻末付録として、その他の企業、全30社の決算書について概要を記しています。本文で何度も触れていますが、「大きな数値から読む」ことを実践して、売上高、純利益、総資産、資産の最大科目、負債・株主資本の最大科目の5つを示し、その特徴を導いています。
儲かっていても債務超過なStarbucksやMcDonald、薄利でもスケールで稼ぎ続けるCostco、やっと黒字になったUber、コロナ回復後に低迷するZoomなど、興味深い企業を多数紹介しています。もちろん製造業についても、スポーツ用品はNIKE、日用品はP&G、食品はNestle、飲料はCoca-ColaやInBev、たばこはPhilip Morris、医療はPfizerとJohnson & Johnson、機械はCaterpillar、化学は3M、そしてEMS(電子機器受託サービス)を代表して鴻海精密工業を紹介します。
人と企業がグローバル化していく上で、会計と英語は不可欠な言語です。コミュニケーションを図るための、必要最低限の言語です。どちらも完璧である必要はありませんが、無知識というわけにはいきません。
どちらもグローバル化に不可欠なら、いっそのこと、会計と英語を同時に学びませんか? 会計は英語で学んだほうがラクに覚えられるのですから。海外に行けば、全部英語で出てくるのですから。
それが私の信念であり、本書の目指すところです。


